「みほが仏を好きなら、みほとけだろうと!」
作務衣をアレンジしたトップスに、足袋と草履という独特な出で立ち。みほとけは自らの肩書きである“仏クリエイター”を前面に出した衣装で登場した。
彼女はAKB48のオーディションに合格するも辞退、その後アイドルグループWenDeeで活動していたという異色の経歴を持つ芸人である。
__アイドル時代の苦悩
「幼少期は万能感に満ちていましたが、周囲の反対でAKB48への加入がダメになったことで、初めて周りを見たり自分を否定したりするようになりました。その後WenDeeというアイドルユニットに入りましたが全く人気が出ず…皆と同じにならなくてはと必死になっては、なぜ上手くいかないのかと繰り返し考えていました。」
アイドル時代に挫折を経験したことで万能感が徐々に薄れていったと言うみほとけさん。しかしその一方で、それが活力になったとも語る。
__芸人への転身のきっかけ
「アイドルを卒業後色々試した結果、賞レースでの成績が良かったんです。芸人さんのラジオを聴いていて憧れがあったのでこの道で挑戦してみようと思いました。」
__芸人になって
「まずは皆と違うことをしたい。そして自分は他人よりも努力をしなくてはいけないと思うようになりました。根拠のない自信は砕かれましたが、根本にあるスーパーポジティブな性格は失っていなかったのだと思います。今も自分は唯一無二になれると思っているから、馬鹿馬鹿しいと言われることでもいつか報われると信じて頑張れています。」
__“仏”を選んだ理由
「人気のないアイドル時代に見出した“自分だけの何か”が仏でした。お仕事にした理由は“好きで楽しい”が一番!自分が興味を持ったものを発表したいという感覚でやっています。皆が仏像の魅力に気づくきっかけになれたら、というのもありますが、正直それは二の次ですね。」
みほとけさんは鎌倉育ちだ。仏像には幼い頃から母親と慣れ親しんできたという。そういった過去も現在の芸風に影響しているのだろう。
__今回の撮影について
「これまで経験してきた、あなたのそれをこう見せてください、といった撮影と違い、私から出る実体のない何かを撮るという全く新しい形で難しかったです。作品にはギチギチに緊張した姿が写っているんじゃないですかね!」
気持ち良いほどストレートな感想に、その場にいた皆が破顔一笑した。夏木元は今回の企画をこう振り返る。
「真面目で気遣い屋な性格が災いしてしまっているのか、自分のペースを守って仕事をするのが苦手な方、という印象を受けました。また仏の道を選んでいるということは弱い部分があるのでしょう。番組でのトークは少し攻撃型に感じましたね。」
みほとけさんは大きく目を見開き、何度も繰り返し頷いた。言い古された言葉に“攻撃が最大の防御”というものがある。だが、防御を攻撃にできることが本当は一番強いのではないかと夏木元は言った。企画を通してみえた、被写体の持っているものにフォーカスし、そこに語りかける。それが我々の大切にしている、視覚では捉えられなくとも必ずそこに存在する何かを引き出すということである。
最後に芸能界を目指す人たちへのメッセージを聞いた。
「まだ私も芸能界の入り口にしかいないので共に頑張りましょう。それから、芸能界ではタレント性を一番求められます。歯車的に動くことも大切ですが、長く続けていくには、自分に最も合った方法や趣味を提示していくことが重要だと思います。多くの人と出逢う業界なので、自分がどんな人でどういう動きができるのかというものを持っていた方が良いです。」
無双になれるように突き進んでいきたいと語ったみほとけさん。挑戦に燃える彼女の瞳は、間違いなく未来を映している。仏の道を辿っているように見えて、実は彼女が道をつくっているのではないか。
次に我々が彼女にカメラを向けたときに映るのは、矛を捨て、盾を手にした後ろ姿かもしれない。
(ライター/咲月)