所属:株式会社アービング
「私、和製モンローなんです。」
そう語るのは、毎日SNSでスカートめくりをされているかのような写真 “スカートふわり”を発信する “世界一スカートをめくられている女”、黒澤ゆりかだ。
ステージ仕様だというスカートをひらりと翻し、慣れた手つきで折る。蝶が花にとまるような上品な所作。
彼女のいう“夢とロマンのつまった場所”は、誰にもみえない。MCのツッコミにはにかみながら「自称ですけどね」と付け足した。
__今回の企画を通して感じたこと
「自分を見つめ直す良い機会になり、楽しかったです。でも写真には“黒澤ゆりか”であろうとするけれどもなりきれていない…そんな、揺れた姿が写っている気がします。」
彼女の瞳を淵まで満たしている透明な膜。
そこへ浮かんだ一瞬の惑いを掬うように、夏木元が口を開いた。
「綺麗だけど、つまらない…。」
長い芸歴のなかで培ってきたものが、彼女を保身に走らせてしまっているのではないか。空気を読もう、バランスをとろうとするあまり“黒澤ゆりか”が出ていない印象を受けたと、撮影を経ての率直な感想を述べると同時に、仕事がルーティン化されてしまっている可能性も指摘した。
これからは自分の殻を破ること、仕事にどう刺激を与えるかが課題になってくるのではと、黒澤さんを真っすぐ見据える夏木元。彼女の言葉と視線に、黒澤さんは深く頷いた。
「私は10年間の芸能生活を、これといった目標のないまま過ごしてきてしまいました。それゆえに“黒澤ゆりか”としての幹がとても細く、まだ自分を表現しきれていないと思うのです。」
__“スカートふわり”はすでに重要なアイデンティティとして確立されているのでは
「自分は何者かと自問自答をつづけた結果に見つけた、一つの答えだとは思います。でも本当はもっと違った自分に出逢いたい。私も知らない私をみつけてほしいんです。」
__そのための手段の一つが写真?
「そうですね。今までは自力でなんとかしなくてはという気持ちが強かったのですが、思い返してみれば、和製モンローとしての私も写真のおかげで見つけてもらうことができたわけですから、もっと周囲を頼っても良いのではないかと思えるようになってきました。特に芸能界は、多くの人の協力のもと成り立っている業界だと思います。」
__そういった芸能界の現状をどのように見ているか
「SNSの普及に伴って、入り口が広がったという印象が強いです。表現方法や売り出し方も多様化してきたのでテレビ出演にこだわる必要もないとは思いますが、テレビという文化が廃れていくのも違う…世間からなにを求められるかというよりも、自分がなにを求めるかによっても変わる時代に突入してきているのではないでしょうか。」
__今後の展望について
「お仕事では、スカート日めくりカレンダーを出したいです。個人的には、これまでは“黒澤ゆりか”のために生きてきた部分が大きかったので、これからはプライベートの自分ももっと愛してあげたいなと」
終始瞳を煌めかせながら答えてくれた黒澤さん。彼女にとって、写真は“羽根”だという。現在のSNSでの活動や、過去にアディダスのCMに起用されたことを例にこう語った。
「写真をきっかけに私を知っていただけたり、自分も知らない自分に出逢えたりする…そんな、私を未来に羽ばたかせてくれるものなんじゃないかな。」
この紙面に写っている“黒澤ゆりか”は、ほんの1枚の羽根に過ぎない。
我々がファインダーをのぞく時、彼女はその1枚いちまいごとに、違った姿で羽ばたいてみせてくれるのだろう。
最後に芸能界を目指すひとたちへのメッセージを聞いた。
「人生の責任をとってくれる人はいません。他人に惑わされず、やりたいことだけをやってください。やりたくないことはやらなくて良いです。自分の信念に従って生きてゆけば大丈夫です。」
いつかたくさんの羽根をその背に携え羽ばたく彼女を、ふたたびファインダー越しにみたいものである。
(ライター/咲月)